【学び】「思考の整理学」を読んだ感想
今回読んだのは著:外山滋比古「思考の整理学」です。
この本が刊行されたのはなんと 1986 年。今から 30 年近く前になります。
それだけ昔に発売されたにもかかわらず、今なお人気がある本です。特徴的なのは本の帯の**「東大・京大で1番読まれた本」、「もっと若いときに読んでいれば・・・」**というフレーズ。
私も書店でこの帯の言葉に惹かれて本を手に取り、中身をパラパラと読んで購入を決めました。
購入した目的は以下になります。
- 思考の整理方法について知識を得る
- 本の帯に書いてある「東大京大で1番読まれた本」の理由を知りたい
結論からいうと、上記の目的は達成できました。30 年たっても読まれる意味がわかる内容でした。
クリエイティブな発想や独自の視点が必要になる人には一読の価値があると思います。
概要(どんな本か)
内容は全部で6章に分かれています。章ごとの見出しがないので自分なりにつけてみるとこんな感じでしょうか。
- 現代教育は自律的に発想する人間を生みづらい
- グライダー、不幸な逆説、朝飯前
- 発想のパターン
- 醗酵、寝させる、カクテル、エディターシップ、触媒、アナロジー、セレンディピティ
- 情報のまとめかた
- 情報の”メタ” 化、スクラップ、カード・ノート、つんどく法、手帖とノート、メタ・ノート
- 思考の整理方法
- 整理、忘却のさまざま、時の試練、すてる、とにかく書いてみる、テーマと題名、ホメテヤラネバ
- 交流の重要性
- しゃべる、談笑の間、垣根を超えて、三上・三中、知恵、ことわざの世界
- 知的活動について
- 第一次的現実、既知・未知、拡散と収斂、コンピュータ
中身はタイトルにあるように思考の整理について書かれた本です。思考の整理のハウトゥーというよりは、どういう時に新しい発想が生まれるか、そのために普段どのように思考整理するとよいのかが過去の偉人や著者の経験をもとにまとめられています。
なぜ昨今の学生は自分で論文の内容を考えられないのかから始まり、新しい発想がどんなときに生まれるか、情報はどうやってまとめたらよいか、交流による刺激について述べられます。
全体を通して過去と現在の対比を行い、人間の普遍的な思考というものを明らかにしていきます。
この本の特徴は、情報を寝させるという観点と積極的に情報を忘れること、忘れるためにはどうすればいいか、が書かれている点です。
朝活のすすめ
夜考えることと、朝考えることとは、同じ人間でも、かなり違っているのではないか、ということを何年か前に気づいた。 引用:P22
よく夜に書いた手紙はそのまま投函せずに、一晩おいて朝に読み返してから投函するということを聞きます。現代だと夜中に書いた SNS のつぶやきに置き換えると共感する人も多いのではないでしょうか。
また、夜中に考えてもわからなかったことが朝になると不思議なくらいすっと解決するという経験はないでしょうか。
私自身もわからなかった数学の問題や進まなかった論文の執筆が朝になるとうまくいくという経験があります。
著者は「朝飯前」という言葉は、朝飯の前だと本来簡単でなかったものが簡単に片付いてしまうのが由来なのではないかと述べていました。
効率的に思考をするためには寝起きがよいのではないかということがわかります。著者は思考にとって有用な時間を作るために朝食を抜く、そして朝食兼昼食をとったら布団で寝る。そうすることで、自分にとっての朝が2回訪れるので午後もよい思考が継続できるといいます。
大事なのはいかにして朝食前の時間を長くするか。
なるほど。たしかにそうかもしれないと思う節があります。実際、現代においても朝活を推奨する本や、生成性を高めるために朝活をしようという話は多いです。
面白いと思ったのは、以前読んだ中島聡さんの「なぜ、あなたの仕事は終わらないのか」と不思議と共通点が多かったことです。 中島さんの本でもモチベーションは少し違いますが、朝に活動することと昼食後にしっかり布団で仮眠をとることが述べられていました。
昼寝については
昼寝をすると脳にたまった老廃物が消えるような気がするので、新しいアイデアがうまれることがありますし、午後以降の仕事にもグッと集中して取り組めるからです。 引用:「なぜ、あなたの仕事は終わらないのか」P176
とほぼ同様なことが書かれています。この本については以下でまとめてあるのでこちらも気が向いたら眺めてみてください。
やはり経験的に寝起きが知的生産活動においてよいタイミングであることがうかがえます。
かくいう私も今年から朝活をがんばっています。
<script>おはようございます☀
— おいまる@ブログエンジョイ勢 (@oio_blog) February 23, 2020
花粉がつらいです。
今日も一日頑張っていきましょう! #朝活
こんな感じで Twitter で起床報告を日課にしてます。
実際、知的生産効率はあがってるので朝活は効果があると思います。
アイデアを出すために必要なこと
「見つめる鍋は煮えない」ということわざがあります。これは鍋が煮えるのをただ見つめて待っているとなかなか煮えないが、目を離すとすぐに煮えるというもの。
これに対してアイデアについても同じことが言えるのではないかというのが著者の主張。
つまり、アイデアをだそうとして頑張って考えてもなかなかいいアイデアはでてこないが、まったく別のことを考えているときにフッといいアイデアが浮かんだりする。まさに「見つめる鍋は煮えない」のです。
著者がアイデアをだすために必要だと述べていることは**「寝させる」**こと。あるアイデアをだすことを関心の中心のせずに、あえて思考の周辺部においておくことが重要と書かれています。
アイデアがよく浮かぶ場所として「馬上、枕上、厠上」やお風呂の中があげられるのも関心が中心から逸れることによるものではないかと予想しています。
つんどく法
「つんどく」と聞くと一般的には本を積んでおくこと意味します。ここでいうつんどく法とは、本を大量に積んで一気に読む思考の整理方法の1つです。
本を読んだときの内容を整理する方法には、ノートやカードに読みながらいろいろメモしていく方法があります。私もここ最近は付箋にメモする方法を採用しています。
しかし、読みながらノートやカードに手書きでメモしていくのは時間がかかりますし、あとからすべて使うわけでもありません。むしろ使われないもののほうが多いです。
そこで、つんどく法は以下のステップで行います。
- 参考文献を集められるだけ集めて、机に積み上げる
- 資料が集まったら片っ端から読んでいく
- 読み終えたらなるべく早くまとめの文章を書く
集めて全部読む、全て読んだらまとめる、それだけです。内容は頭のノートに記録します。
途中に簡単なメモならとってもいいです。ただ基本的に無駄なことはせずとにかく読みます。
片っ端から読むといっても最初のほうはなるべく簡単そうな内容から読み始めたほうが、難しい本を読む際に役立ちます。
このやり方だと「読んだ内容を忘れるのでは?」と思いますが、興味関心のあることなら簡単には忘れません。むしろノートなどに残してしまうと、記録した安心感でかえって忘却が進むと本では述べられています。
忘れることの重要性
新しいことを考え出すには頭の中が整理されてなくてはならない。しかし、現代人は覚えることばかりで頭の中が整理されてないのではないかというのが著者の主張です。頭のなかの整理とは、すなわちいるものといらないものの仕分けです。つまり、必要ないことは忘れる必要があるということです。
このことを示す例として睡眠があげられています。人間は睡眠中に頭の整理を行っています。寝起きに頭がスッキリしているように感じるのはそのためです。
本ではこのように述べられています。
勉強し、知識を習得する一方で、不要になったものを処分し、整理する必要がある。 (中略) 頭をよく働かせるには、この"忘れる"ことが、極めて大切である。頭を高能率の向上にするためにも、どうしてもたえず忘れていく必要がある。 引用:P115
忘れることの取捨選択を行うには判断基準となる価値観がしっかりしている必要があります。
忘れる方法には、睡眠の他に、まったく他の仕事を行うことと散歩をすることがあげられています。
逆に、忘れようとしてもなかなか忘れることができないものは自分にとって大事なことと言えます。
感想
読み始めたときは、「本当に 1987 年の本なのか?現代に共通する話が多い」と驚きました。
新書なので、読みづらいかとも思いましたが、かなり読みやすい言葉で書かれていました。
この本が東大や京大で読まれているのはなんとなく納得です。おそらく、人文系の学科では卒業論文のテーマ選びというのは理系と比べて難しいのだと思います。本の内容はアカデミアの方がテーマ選びに悩んだ結果、たどり着いたやり方のように感じました。
個人的には頭を整理する上で「忘れる」ことに注目しているのが新鮮でした。整理というと、情報を入れて並び替えるイメージでしたが、積極的に忘れるという方法もあるのだと学ぶことができました。
細かく思いついたことをメモするのは、忘れるためであり、アイデアを寝させるためというのは参考になりました。
メモといえば前田裕二さんの「メモの魔力」も有名です。メモの魔力の方は具体的なメモのやり方と意識的なメモの活用について述べられているのに対して、思考の整理学は無意識に着目しています。
どちらも頭の整理やアイデアの創出として、メモすることをあげているのは面白いです。
この記事で紹介した以外でも知的生産で役立つことがたくさん書かれています。
自分用に大事だと思ったことを少しメモしておきます。
- 調べる前によく考える時間をとり、なんのために調べるのかを明確にする。
- すべてを知ろうと欲張りにならない。対象範囲を決める
- とにかく書いてみる。頭は混乱している。書くことで頭が整理される。
- 考え事をしていれるときにはくよくよしない
- ピグマリオン効果
- アイデアはすぐに誰かにしゃべらない。しゃべることで満足してしまう。批判にさらされモチベーションが下がる